精神福祉士、産業カウンセラーの小西先生が語る「ハッピーマインド」とは

精神保健福祉士、産業カウンセラーの小西喜朗先生は、2010年より累計600回以上のマインドフルネス関連の講演・セミナーを行い、11年以上に渡りマインドフルネスの普及に勤めています。医師・心理職等の専門職から一般ビジネスマン、少年院での矯正教育、精神科デイケアやカウンセリングでのマインドフルネス実践といった豊富なトレーニング経験に加え、最近ではオンラインライブレッスン「RussellME プレミアム(旧:JIBUNME)」で、月替わりでストレス対策や幸福づくりをテーマにワークショップを開催し、ユーモア溢れる講義が好評を得ています。今回のインタビューでは小西先生に、「幸福」についてお話を伺いました。

――小西先生は企業のメンタルサポートのお仕事をされていた中で、マインドフルネスに出会われたそうですね。

「90年代から企業のメンタルヘルス対策を行う事業を行ってきました。当時は自殺者に急増が課題でした。ストレス対策のサポートですね。その中で2006年くらいにストレス対策の有効なソリューションとして、マインドフルネスが日本に上陸したんです。東大病院で心療内科の准教授だった熊野宏昭先生などがマインドフルネスを紹介していて、とても面白いなと思った。僕は大学の頃にインドに行ったり、瞑想をしたり、気功をしていたので、マインドフルネスにすぐに飛びついたんですよ。それで、2009年に日本マインドフルライフ協会というのを作りました。ジョン・カバット-ジンの『マインドフルネスストレス低減法』を翻訳した早稲田大学の名誉教授である春木豊先生に初代の会長になっていただきました。2012年にはジョン・カバット-ジン氏も日本に招聘しました」 

――先生はマインドフルネス瞑想の指導歴も長いですが、クラスやワークショップを受講した方々から、マインドフルネスの実践を続けた結果、どんな効果が表れたと言われることが多いですか?

「マインドフルネスを続けていくと、自分の心の動きがわかるようになります。多くの人は自分の自動思考に気づいてはいません。どうしてストレス反応が自分に起きているのか自覚できないのですが、こうした心の反応に気づけるようになります。そして心の柔軟性が高まり、ストレスに圧倒的に強くなるのです」

――思い込みとか先入観で物事を見ないので、視野が広くなるということですか?

「そうですね。自分の視点がどこにあるのかに気づき、物事を俯瞰できるようにもなります。そして、臨機応変な対応をできるようになります。宗教的になっちゃうかもしれないですが、”妄想”って言葉がありますよね。私たちは妄想の世界に生きてるとか無明(仏教用語で無知であること。苦の根源とされている)の中にいるとか。この無明を克服して知恵を得るというのが仏教が目指しているところなんです。思い込みや偏見が少なくなることで、私たちは物事の本質に気づくようになります。それがマインドフルネスのパワーです」

――しかし、多くの人にとって、マインドフルネスの実践を続けることは、なかなか大変ですよね。続けるモチベーションを保ってもらうための工夫や説得の仕方などはありますか?

「続けると心が自由になる、心が柔軟になると伝えているのですが、これってわかりにくいですよね。でも、心のとらわれから抜けられる、世界が明るくなる、視野が広がるといったことが起きます。多くの人たちは、心の生活習慣に囚われた見方をしていると言っても、そのことに気づきにくいですね。マインドフルネスでは、物の見方が変わって、世界の見え方が変わるんですよ。体験してみないとわからないと言えば、わからないかもしれません。最初は1日にたとえ1分でもいいので、まずは継続してやってみることをお勧めします」

――自分の感情とかに気づくようになると、マインドフルネスの練習を続けるモチベーションにはなりますよね。

「自分ってこんな時にこんなことをする人なんだとか、こんな反応をするんだとか、自分がこんな風に悩んでるのにはこんな理由があったんだとか、自分が悩んだり苦しんだり、壁にぶつかっている理由がよくわかってくるのです。まざまざと。これが楽しい!」

――先生はオンラインクラスで「コニタンのハッピーマインド講座 〜毎日を幸せに過ごすための知恵とスキル〜」という講座を担当されてますが、先生が考えるハッピー、幸せって何でしょう?

「幸せって何? って難しいですよね。僕がマインドフルネスで感じる幸せは、自分の身体にアクセスした時に、今生きていることそのものが嬉しいとか、気持ちいい、存在していること自体に、体から湧き上がるような喜びを覚えるってことです。これって只ですよ」

――私たちはみんな幸せになりたいと願いっていると思いますが、幸せになることを遠ざけているものは何なのでしょう?

「どこかに幸せのゴールがあると思って努力する人たちが多いんですよね。例えば、今の自分はダメだからそれを克服しなければいけないと考えちゃいます。人間性でも幸福度でもいいですけど、自分はまだ10点満点の5点や6点、場合によっては2〜3点だと思ってる人が多いですね。8点にならなければ幸せじゃないと思っている。一生懸命そこを埋めようとして頑張っているんだけど埋められなくて不幸だと感じている。どこかに双六のアガリみたいなのがあると思っているんです。幸せっていう到達点があるのではと。でも、そんなのどこにもありません」

――なかなか幸せの定義って難しいですね。

「先日、「ハッピーマインド」の講座でも話したのですが、樺沢紫苑さんという方が、『精神科医が見つけた3つの幸福』(飛鳥新社)という本を出されました。実は僕も以前からよくセミナーで言ってたのですが、幸せには、ドーパミンの幸せ、セロトニンの幸せ、オキシトシンの幸せの3つがあるのです。ドーパミンは報酬系の神経伝達物質で、勝負に勝った時とかお酒やドラッグなんかの時に出るものです。ドーパミンの幸せは長続きしないんですよ。最初はビール1杯で満足できたのが、どんどんお酒に強くなるに従って、2杯、3杯と増えていきます。ドーパミン耐性っていうんですが慣れると、耐性がついてもっと欲しくなる。だから依存症になりやすいんです。ギャンブル依存も同じです。でも、これがあるので人類は文明を作ってきたし、生き残ってきたのです。この幸せはDoingの幸せなんです。一方、セロトニンとオキシトシンの幸せはBeingの幸せです。朝スッキリ目が覚めて、綺麗な朝日を見てシャキッとして、夜になったら疲れてぐっすり眠る。セロトニンは、そういう生きていることを感じる幸せなんです。心身が健康で交感神経と副交感神経のバランスが取れている状態です。午前中にセロトニンに出て高まっていって、夜にはセロトニンからメラトニンが作られてぐっすり眠るというサイクルを作ります。これは禅的な幸せなんですよね。セロトニンは幸せホルモンと言われています」

――朝起きて瞑想するのは理にかなっていますね。

「そうですね。朝の散歩もいいですよ。姿勢をきっちり調えても、セロトニンが分泌されます。また、リズム運動も効果があるのですけれど、呼吸を意識するのはまさにリズム運動なんです。ですから、禅的なライフスタイルでセロトニンが活性化すると言われています」

――セロトニンと同様に、オキシトシンも幸せホルモンと言われていますよね?

「そうですね。愛のホルモンとも言われています。オキシトシンは元々は女性が授乳をするときに出てくるので女性ホルモンだと言われていました。でも、男性も出ます。団結したり、協力しあって何かを達成したときにも出るのです。恋愛で恋人をゲットして出るのがドーパミンで、3年過ぎてきたらオキシトシンが出ないと離婚すると言われています(笑)。オキシトシンの幸せは愛情とか信頼の幸せです。生きていく基本的なリズムはセロトニン的な幸福で、それに対して仲間たちと団結し、協力し合うのがオキシトシン的な幸福です。仲間と協力しながら、目標を達成したり、集団で戦って勝った時には、ドーパミン的な幸せとオキシトシンの幸せをダブルで感じます。ドーパミンの幸せばかりを求めて家庭的な幸せをおろそかにしたり、生活リズムが崩れたりすると身体に悪影響を及ぼします。幸せは何かを得るとかゴールに到達するばかりではありません。マインドフルネスの幸せはセロトニンだったり、オキシトシンの幸せだったりするんです」

――オキシトシンは自分や他者の幸せを願う「慈悲の瞑想」をすることで活性化すると言われていますね。しかし、自分の幸せを願うことに違和感を感じるという人も結構います。

「慈悲の瞑想では、まず、「私が幸せでありますように」と心の中で唱えるのですが、時々、これに違和感を持つ方もいますね。よく、「自分を愛せないと、他人を愛せない」と言われますが、自分がコンプレックスや嫌いな部分を持っていたりすると、相手にその部分を見つけてしまうんですね。また、自分ができないことを相手がいとも簡単に行っていたりするとムカついたりするわけです。だから、基本的に自己受容できないと、なかなか他者受容もできないんです。「慈悲の瞑想」では自分の幸せから願いますが、このことにも大切な意味があるのです」

――先生の自己受容の定義とそれを育む方法を教えてください。

「いいも悪いも何もかも関係なく、できるもできないも関係なく、あるがままの自分を尊重するというのが自己受容ですね。無条件の愛です。自己肯定感も自己受容があって初めて高めることができます。ネガティブ感情とポジティブ感情があったとしたら、無理にポジティブになるのではなく、ネガティブ感情をしっかり受け止めることで幸せになることができると思います。例えば、美味しそうなウサギがいて、そのウサギを捕まえようとしたらライオンに狙われたとします。ウサギを捕まえる喜びより、ライオンに狙われて怖い方を優先して逃げないと、自分がエサになってしまうんです。リスクに敏感な方が生き残る可能性が高いんです。ですから、生きる上ではネガティブ感情がとても大切なのです。だからこそ、私たちはネガティブに敏感になります。例えば、高いところが怖いのは危険だからですね。もし恐怖心を感じなかったら、事故を起こす人が増えるでしょう。こうしたネガティブ感情は避ければ避けるほど、逆に強くなるのです。例えば、不安を完全になくそうとすると、私たちは不安の材料がどこかに隠れていないかを探します。その結果、幾つもの不安の元を見つけてしまいます。もし自分に対してネガティブな考えが出てきたら、否定しないこと。それは生きるエネルギーが強いからだとまず思ってください」

――先生も不安や怒りの感情が湧いたりするんですか? そんな時はどのように対処するのですか?

「もちろん、不安も怒りもありますよ! そういう時はできるだけ早くその場から逃げて、他の行動をします。そして、自分の感情を眺めます。自分はこういうことをしたいんだなとか、本当はこういうことを自分がしたいのに邪魔されたから嫌なんだとか、ネガティブ感情が出てくる背景には必ずポジティブな気持ちがあります。その場から逃げられない時は視線を天井や床にずらして、呼吸を観察したりしています」

――最後に「コニタンのハッピーマインド講座〜毎日を幸せに過ごすための知恵とスキル〜」ではどのようなトピックを扱っていく予定ですか?

「ストレス対処スキルはとてもたくさんあります。自動思考と関連したこと、脳が起こしやすい誤解など、日常生活ですぐに使えるストレス対処法をお伝えしたいですね。月ごとに大きなテーマに分けて、マインドフルネスも含めながらやって行こうと思ってます」

Text : 松田敦子

小西先生のワークショップ、「コニタンのハッピーマインド講座〜毎日を幸せに過ごすための知恵とスキル〜」は、セルフケアライブレッスン「RussellME プレミアム(旧:JIBUNME)」にて受講できます。まずは、14日間の無料体験をお試しください。

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