東京五輪ハンドボール男子の土井杏利選手、マインドフルネス瞑想の実践でメンタルを強化

日本ハンドボールリーグの大崎電気に所属し、ハンドボール日本代表キャプテンとしても活躍する土井 レミイ 杏利選手。2017年には日本人で初めてフランスのハンドボールリーグのオールスターゲームにも出場した経歴も持つトップアスリートであり、最近ではショートームービー・プラットフォームのTikTok(ティックトック)で、”レミたん”というニックネームで人気を博していることでも知られています。そんな土井さんが選手として不調の時にたまたま出会ったのが「マインドフルネス」の本。実践を始めてすぐに効果を感じたことから、マインドフルネスの呼吸法をベースにした瞑想が習慣に。アスリートにとって、マインドフルネス瞑想はどのような効果があるのか、ご自身の体験から語っていただきました。

調子があがらない時にたまたま出会ったのがマインドフルネスの本

ーー土井さんは、何がきっかけで瞑想を始めたのでしょうか?

土井(以下D)「一時期、フランスリーグで調子が上がらない時がありまして、変にプレッシャーを感じてしまって…。そこから抜け出したいなと思っていた時に、マインドフルネスの本に出会ったんです。瞑想のことや考え方などが書いてあったので、実践してみようと思いました」

ーーどのくらいで効果を感じましたか?

D「実感し始めたのは、始めて1週間目くらいですね」

ーーそれは早かったですね。本のタイトルを教えていただけますか?

D「『マインドフルネス思考』という本です。たまたま表紙に惹かれて買ったんです。もともとメンタルについて勉強するのが好きで、哲学の本も好きだったんです。哲学の中でも特に東洋哲学が好きで。仏教の中でも瞑想が出て来ますし、凄く興味があって。東洋哲学にはスポーツに繋がるものがよく出てくるんですよ。例えば無我の境地とか。ゾーンに入るっていうんですけど、アスリートだったらみんな経験しているんですよね」

ーーゾーンに入る状態ってどのような感じなのですか? 土井さんだったら、ボールがゆっくり見えるとか?

D「何も考えてない状態ですね。だけど、何がどうなるか感じ取れるような感覚っていうか。そういう状態になると、何でも上手くいくんです」

ーーまわりがよく見える?

D「そうです。わざとここを空けておけば(肩の上に空間を作る動作をする)、チームメイトがここめがけてパスしてくるなって分かってくるんです。それを考えるのではなく、感じるんです。マインドフルネスって無駄を排除するんですよね。スポーツをやっている時、コート上で一番無駄なのは思考なのです。考えている時って上手くいかないんです。考えるより先に感じないと、シュート外したらどうしようとか考えている間に凄いスピードで状況が変わるので。考えてしまう自分というものを排除するのに役立ったのが、マインドフルネス瞑想なんです。結構、適応能力があるので、やってみようと思ったら適応するのが早くて。なので、1週間くらいで効果が出たのかと」

ーー瞑想はどのような環境でやってるのですか?

D「静かな部屋で暗くしてやっています。椅子に座って楽な姿勢で。7秒で吸って、1秒止めて、10秒で吐くという呼吸法をやっています」

苦しい時は頑張るんじゃなくて、全く違うことをしてポジティブな感情を持つ事が大事

ーー先ほど調子が上がらない時が続いたとおっしゃっていましたが、そういう時はどんなことを考えていましたか?

D「日本の美学だと思うんですが、苦しい中で頑張ってそこを抜け出して結果を残そうみたいなものがあるじゃないですか。それも大事だと思うんですが、その逆を行ってもいいんじゃないかと思ったんです。抜け出せないんだったら、1週間くらいやめちゃっていいと思います。旅行に行ったり、全くハンドボールと関係ない生活をした方がいいかと。負の中で何か楽しい、ポジティブな感情が欲しいいんです。それが次の一歩目になるので。ポジティブなマインドを持つと、またハンドボールをやりたいなって気持ちになるんです。そういう気持ちが大事なんです。それで久しぶりにやると、何であんなことで悩んでたんだろうって思うんです」

ーー代表のキャプテンということで、大きなプレッシャーを背負うことや、リーダーシップを発揮する事を求められると思います。そのような状況の時にメディテーションの効果は感じますか?


D「今ではプレッシャーもそんなに感じないですね。キャプテンだからっていうプレッシャーはないです。リーダーシップに関しては、もともとキャプテンじゃない時も、他の選手たちよりも海外での経験があるということで、リーダーシップを取って、それを伝えなきゃいけないって思っていました。それが自分の使命だなと。苦しい中でマインドフルネスに出会って、それで乗り越えられたっていう経験もあるので、例えば誰かが落ち込んでいる時に、瞑想とかやってみるといいよって言ってみたりも。もちろん、誰にでも言うわけじゃないです。落ち込んでいて、この選手には瞑想が必要かなって思った時に言います」

自分が大活躍してチームが優勝しているイメージを小さいころから常に描いている

ーー瞑想と共に組み合わせて実践されていることはありますか?  イメージトレーニングやストレッチなど。

D「イメージトレーニングは小さい頃から自然にやっていますね。サッカーワールドカップで使われているような盛大な音楽を流しながら。小さい頃から自分が大活躍して優勝しているイメージを常に描いています。失敗をしてもこうしたら上手くいったんだろうなというイメージを強く描いて、記憶を改ざんしちゃうくらいイメージトレーニングをしています」

ーー瞑想したことで、イメージすることがやりやすくなったりしましたか?

D「あります。特に負のスパイラルになった時は役立ちました。ハンドボールが好きだから、いつもは寝る前に成功するイメージが頭によぎって寝るんですが、その時期はシュートを外しているイメージしかできないんですよ。シュートして、キーパがいて、どこ狙っても外すような感覚です。それが、瞑想することで失われていったって感じです。リアルに変わりましたよ」

ーーテクニカルトレーニング、フィジカルトレーニングだけでも、体力/時間ともに使われると思いますが、瞑想まで実践できるのはなぜでしょうか?

D「もちろん、身体作りや競技の技術はとても大事です。それがないと世界のトップにはいけないので。でも、メンタルの部分が本当にプロとしてトップレベルじゃないと、その世界では戦えないんです。もちろん、もともとメンタル最強! みたいな、必要じゃない人もいますが。でも、そういう人たちでもスランプはあると思います。ただ、彼らの場合は全く気にしないんです。自分は最強だって信じているから。メンタルの部分が優れてないと、どの世界でも上までいけないと思います。結果も出て来ないし、人間関係も悪くなるし。だから、凄く大事にしています」

マインドフルネス瞑想を続けると、恐怖心が抑えられて勇気が生まれてくると思う

ーー土井選手はいつ、どこで瞑想をしていますか?

D「昼に練習が始まるんで、その前にやっています。毎日やるんじゃなくて、ちょっと精神的にくずれいてるなって感じたらやります」

ーー強豪チームに対する恐さを克服する勇気を持つことに瞑想は役立つと思いますが、いかがでしょうか?

D「役立つのではないでしょうか。扁桃体の活動が抑えられることによって、恐怖心が抑えられると思うので。プレッシャーがなくなるだけでも、だいぶスムーズに行くかと。身長2メートルで、体重120キロある選手の間を割って入って行くのは、本当に勇気がいることだと思います。でも、マインドフルネスを続ければ、その勇気というのは生まれると思います。あと、瞑想をやる時もそうだと思いますが、姿勢がとても大事だと思います。これは、科学的に証明されていることなんです。自信がないと背中がちょっと前に丸まったりするじゃないですか。自信がある人は逆に胸を張っています。これってメンタルが姿勢に影響を及ぼしているんですけど、実は逆もしかりなんです。姿勢を堂々とすると、自信がない人でも自信がついてくるんです。海外のある実験で、集まった人たちをわざと悪い姿勢を取ってもらうグループと堂々とした姿勢を作ってもらう2つのグループに分けたんです。しばらくその姿勢を取ってもらった後に、サイコロで賭けをしようと誘うんです。そうすると、姿勢が悪かったグループの多くがやめときますと言ったのに対して、姿勢がよかったグループは8割くらいがやるっていったそうです。姿勢がメンタルに与える影響は大きいんですよ。クリスチャン・ロナウドなんて、常に堂々としているじゃないですか。ミスした後って日本人って謝る選手が多いんですよ。外して失敗した時こそ、姿勢を正して堂々とした方がいいって選手たちに言いました。それで変わった選手、いっぱいいますよ」

ーー個人でやるよりも、みんなで瞑想した方がやりやすいですよね?

D「メンタルの講習は週に1回やっていて、グループディスカッションみたいな感じですが。その中に瞑想の時間があってもいいですね。メンタルが落ち込んでいる選手に僕がするアドバイスがいくつかあるんですけど、そのうちのひとつが呼吸法です。あと、「暗示放尿」っていうのもあるんです。放尿しながら、自分自身の悪いと思っているところをイメージして尿と一緒に体外に出すんです。身体の中から負の部分を流し出す感じですね(笑)」

土井杏利
ハンドボール選手。日本ハンドボールリーグの大崎電気所属。ハンドボール日本代表キャプテン。

Text:松田敦子

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