悩み多き現代人の子育てに効くマインドフルネス

マインドフルネスとは、自分の感情やそれが引き起こす身体的な感覚に「気付き」、「感じ」、「受け入れる」こと。「子育てに効くマインドフルネス」や「マインドフルネス子育て法」といったマインドフルネスと子育てに関する著書がある臨床発達心理士の山口創先生は、それらの著書でマインドフルネスこそ子育てに役立つと言っています。なぜ子育てにマインドフルネスが役立つのか、続けることによってどのような変化が起きるのかを山口先生に解説していただきました。

情報過多の現代における子育ての問題点

子どもを育てることは、楽しいこともたくさんありますが、そんな中にも思い通りにならなかったり、不安を感じたりくよくよと悩んでしまうときもたくさんあるでしょう。

子育てではどうしてネガティブに感じてしまうのでしょうか。

現代はインターネットでたくさんの子育てに関する情報が手に入るため、色々な情報がありすぎて、「何が正しいのかわからない」、「うちの子は普通じゃないんじゃないか」と余計な不安を感じてしまうことがあります。そして正しい「正解」にたどり着こうと思って、なかなかうまくできずに悩んでしまうこともあるでしょう。

こうしたことは、一昔前まではあまりなかったことです。たとえば同じような心配事や悩みが出てきたとしても、3世代同居が普通だった時代は、祖母から色々な体験を聞き出すこともできたでしょう。また情報が少ない分、親は子どもをよく見て対応を考えますし、ネット上の他の子どもと比べることも少なかったはずです。

こうして核家族化がますます増える一方で、孤独に追いつめられる母親が増え、子育ての負担は母親に重くのしかかるようになりました。仕事をしている方は、朝から子どもを保育園に預けて、夜、お迎えに行くという生活をしながら頑張っている方も多いでしょう。帰宅してからも家事に追われ、子どもをじっくりと観る時間がほとんどとれないのではないでしょうか。父親はさらに子どもと過ごす時間が少ないでしょう。専業主婦の方も、子どもと一緒にいる時間は長くても、子どもにゲームやテレビを与え、子どもとあまりコミュニケーションしていないかもしれません。

親がマインドフルに、そして子どももマインドフルになる

前述のように、現代は子育てをするのは大変な時代だといえるでしょう。

子育てを大変だと感じる人のほとんどは、子どもと一緒にいる時間の多くを「心ここにあらず」という状態で過ごしています。子どもが話していても食事の準備をする手は止めないとか、子どもの声に耳を傾けずに、ずっと携帯電話を手放さずSNSのやり取りをしている人も見かけます。

「いま、このとき」に起こっていることに意識を向けていないのは、マインドフルとは逆のマインドレスの状態です。マインドレスにある人は、心が「自動操縦状態」にあります。たとえば運転するときや歩いているとき、わざわざハンドルを握る手の力や、歩く脚の動きに注意を向けることはなく、自動的に反応しているのではないでしょうか。子どもと関わるときも同じです。子どもと関わっていたとしても、多くの時間を子どもに関心を向けず、毎日やることをルーティンワークにしてしまい、「早く宿題やってよ」、「早く食べなさい!」などと課題をクリアするようになってしまっているのではないでしょうか。

このような時間の過ごし方をしていると、子どもの行動を、課題や目標との関係でしか捉えられないため、不安やイライラが高まるのです。

そうした気持ちというのは、子どもに自分の思い通りにさせたいけれど、思い通りにならないときに生まれてきます。前述のように毎日やるべきことを早く片付けてしまいたい、という場合が1つです。またたとえば子どもに手がかかって、子どもにずっとつきっきりなので自分がやりたいことができない、とイライラしている人がいたとします。すると「イライラの原因は、子どもに手がかかるせいだ」と考え、カッとなって子どもに怒りをぶつけてしまうことになるでしょう。その結果、子どもが泣きわめいてさらにイライラが高まったり自己嫌悪に陥ってしまうのではないでしょうか。

そうではなく、そのような気持ちを十分に観察してみることが必要なのです。嫌な気分を感じた時の身体の感覚(心臓がドキドキしているなど)はどんな感じか、そのときどんな考えを持っているか(子どもに自分の時間を奪われている)といったことを観察してみるのです。そしてそれが現実の自分なんだと受け入れてみましょう。これをアクセプタンス(受容)と言ったりします。そうすると、先の「自動操縦状態」から抜け出し、自分の気持ちに気づき、考えることができます。

そして自分の時間がとれたら何をしたいのか、しっかりと前向きに考えて、それを順位づけしていくのです。たとえば「なぜ自分の時間がほしいのか」を考えてみましょう。たとえば自分の時間ができたら「好きなレストランに行きたい」「旅行にも行きたい」などあるでしょう。それらを順位づけしてみましょう。そして小さいことからできるように時間の使い方を考えていくのです。

週末に実家や夫に子どもを預けてみるのもよいでしょう。あるいは子ども連れで行ける好きなレストランに行ってみるのも良いでしょう。旅行で好きなところに行きたいときは、たとえば実家の家族も一緒に行ってもらえば、子どもを預けて好きなことができる時間もとれるでしょう。

こうしてマインドフルになると心の自動操縦状態から抜け出し、自分の感情や考えに気づき、問題解決につながるのです。そして同時に、子どものあるがままの気持ちにも気づくことで、「なぜこのような行動をするのか」がわかり、心も通じやすくなるのです。

マインドフルネスを続けると脳の各部位に起きる変化

◇前帯状皮質の活性化

「前帯状皮質」という部位は、脳のなかの活性化する部位をスイッチングする役割を持っています。マインドフルネスをすると、今までいろいろと考え悩むという回路から、目の前のものを感じるという回路に変化します。

◇背外側前頭前野の活性化

前頭葉にあり、思考や認知など知的活動のまとめ役をする部分で、大脳全体の司令塔と呼ばれています。マインドフルネスを行うと、色々なことに意識が飛んでしまう状態をコントロールすることができるようになります。

◇後帯状皮質の沈静化

後帯状皮質とは、脳の真ん中に位置する部分で、過去をくよくよ思い悩んでいたり、心がさまよっている時などに活性化します。マインドフルネスを行っていると、この部分が沈静化してくるため、ストレスが低減します。

◇前頭前皮質が厚くなる

前頭葉の前の表面部分にある前頭前皮質は、主に人間らしい高次の思考活動である判断、決定、思いやりや共感、などを感じる時に活性化する部分です。マインドフルネスをおこなうことで、人が現代社会を生きて行く上で必要不可欠な能力が磨かれていくのです。

◇扁桃体の縮小

扁桃体は、不安や恐怖、怒りなどを感じると活性化します。マインドフルネスを実践している人は、扁桃体が小さくなるため、頭に血がのぼって感情的になるようなことを、減らしてくれるのです。

親に実践していただきたい4つのマインドフルネス・エクササイズ

◇呼吸の観察:目をつぶって呼吸をする時のお腹の動きに注意を向けます

◇食べる瞑想:1つのものを5分ほど時間をかけてゆっくりと注意を向けながら食べます。

◇ボディスキャン:頭、足の裏、肩、胸など1箇所に1分ずつ注意を向けて感じます。

◇歩く瞑想:ゆっくり歩いて、足の裏や筋肉の動きの感覚に注意を向けて観察します。

子どものための簡単なマインドフルネス・エクササイズ

小学生くらいからできるマインドフルネスのエクササイズを1つ紹介します。

◇呼吸を感じる:3分程度でよいので、じっと座って呼吸に意識を向けてみましょう。姿勢は寝転んでも椅子に座ってやってもよいです。息を吸ったときにお腹が膨らむ感じ、息を吐いたときにお腹がへこむ感じを感じてみましょう。慣れないうちは、息を「ひとーつ」「ふたーつ」と数えていくのもよいでしょう。

親が実践するマインドフルネスも子供ができるマインドフルネスも、続けることで効果が現れてきます。他にも、こちらの記事で親が子供に実践させるマインドフルネスをいくつか紹介しているので、試してみてはいかがでしょうか? 

山口創(やまぐち はじめ)
桜美林大学リベラルアーツ学群教授 / 博士(人間科学)/ 臨床心理士

メンタリング瞑想アプリ「RussellME」では、音声を聞きながらお子様と一緒に実践できるマインドフルネス瞑想のプログラムをご用意しています。

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