ヴァンで日本中を移動しながらヨガを伝える西川順喜先生。起業家としての一面も持つ西川先生は、社会とヨガとのバランスを取りながら人生を軽やかに楽しんでいます。過去の経験すべてが必然だったかのように今を迷いなく生きるその様子は、私たちに自分自身の心を繰り返し見つめ続ける大切さを教えてくれているように思います。
ー西川先生といえば、起業家/ヨガ・瞑想指導者/バンライファーと肩書きが面白いですよね。今の活動について教えてください。
起業家という意味では、会社を起業することだけではなく、ひとつのプロジェクトだったり、もっと小さいことでも、ゼロから起こすことにワクワクするタイプなんです。Lotus8では神戸のスタジオを立ち上げたり、最近ではコーヒースタンドを作ったりしています。
ーバンライファーになられたのはまさにワクワクしたからなんでしょうか?
そうですね。物事を起こす時って先の不安も考えると思うんですけど、子供みたいにただ「ヴァンライフってかっこいい」という気持ちで始めました。
Foster Huntingtonという僕がロールモデルにしている人がいるんですけど、ヴァンライフっていう言葉を作った人なんですね。彼は元ラルフローレンのデザイナーで、ある時ヴァンに大切な物を詰め込んで旅に出て、今はツリーハウスで生活しているという面白い人。コロナの時に彼の本に出合ったことがきっかけになっています。彼が自分と同じ歳だということに気付いたらなんか悔しくなって、じゃあすぐに始めようと思ったんです。
それまでは大阪でスタジオを3店舗運営していて、スタジオを始めた2015年から、24時間365日、気持ち的にも物理的にも側にいたんですよね。スタジオは好きで始めたことなんですけど、どうしても身動きは取りにくくなっていました。でも、コロナで緊急事態宣言がありスタジオを開けられなくなって時間ができたんです。そこで、旅に出たいなと思って、まずはキャンプから始めようと思ったんです。自分の車にキャンプ道具を積み込んでキャンプに出かけたことで今のヴァンライフが始まりました。
ー極端ですね!
今までも極端なんですよね。2015年から自由がない生活を続けてきてタガが外れたように今の移動生活になりました。その時の車は今とは別の車でしたが、ご縁があってワーゲンバスに乗り換えました。

ーそれで今のワーゲンバスでのヴァンライフになったわけですね。ちなみに、肩書きにはヨガ瞑想者とありますが、西川さんはソーシャルヨギーと名乗られてもいますよね。西川さんの考えるソーシャルヨギーとは?
僕は一時期、悟りというものにものすごく興味を持っていたんです。26歳くらいからヨガを教え始めて、自分よりも人生経験が豊富な方にヨガ哲学を教えている自分を、「悟ってもいないくせに偉そうだ」と俯瞰して眺めている自分がいて。悟ってもいない人が教えてはいけない気がして、「早くこの山を登らないといけない」と思ったんです。「ああもう、伝統的なハタヨガやクンダリーニをやっていても悟れないな」と思って寺に行ったんです。1週間の寺ごもりプログラムで、4日目の朝に禅問答の課題をクリアできたのですが、プログラムを終えて和尚と話した時に、「悟りっていうものは君が考えているようなものではないし、今回達した答えも悟りではない。まだまだ道の途中だから焦るな。」と言われたんです。その時に、「ああ、今じゃなくてもいいんだ」と思えたんです。
その経験があって、ソーシャルヨギーという考えに行き着くのですが、ヨガって極めれば極めるほど社会から離れていくと思うんです。例えばヨガスートラやバガヴァッド・ギーターなどヨガの教典はたくさんありますが、ヨガを生活の中に取り入れようとしてそれらを参考にしても、取り入れられないことがたくさんあると思うんです。それは時代が違うから。だから、ヨガを追求すると社会で生きにくくなると感じています。でも僕たちにはこの社会も、社会での役割も必要なんですよね。それなのに、ヨガを追求するとその役割を捨てるところに行き着いてしまう。それって現代的なヨガではない。あくまでもヨガの思想を持って社会の歯車を回していくのが僕の中でのソーシャルヨギーなんです。社会から離れてヨガをするのではなく、この社会の中で上手に機能していける人。世の中には相反する思想がたくさんありますが、中立的な立場で物事を見ることができる人のことをソーシャルヨギーと呼んでいます。

ー20代から教えられているということですが、ヨガとの出合いはいつ頃ですか?
25歳頃ですね。ヨガに出合ってから教えるまでは早かったです。元々、ヨガがいいものだということは知っていたし、やったこともあったんですけど、ハマってはいなかったんです。ある時、交通事故に遭って、ヨガをリハビリに取り入れたことがきっかけで取り組み始めました。
ーどんな経緯でヨガ講師になられたのですか?
ヨガの練習をしていて先生たちに質問すると、みなさんふわっとした回答をされるんですよね。例えば、正しいポーズの形を知りたくて爪先の向きを聞くと、「どれが気持ちいい?」と質問で返されたり、「どっちでもいいよ」と言われたり。でも、僕の今までの人生ではどっちでもいいなんてことはなくて、白黒ハッキリ付ける考え方だったし、占いとかスピリチュアルとかも嫌いだった。だから、この先生は何も知らないからこういう答え方をしているんだと思ってしまったんです。じゃあ知っている先生に聞きに行こうと色々な先生に聞きに行ったら、みんな同じような考え方なんですね。相変わらず、「どれが気持ちいい?」と返される。僕は正しい方法を聞きたいのに。それで、この世界はなんなんだろうと思って、自分とは相反するものだからこそもっと知りたくなったんですよね。
そこからは急にシフトチェンジして、仕事を辞めてバリ島にヨガの勉強をしに行きました。調べていたら日本のヨガの第一人者が教えるリトリートということだったので、ヨガの第一人者だったら全てを知っていて僕がわからないことを教えてくれると思って。結果的には、答えを提示してくれるというより、自分の中の固定概念を覆してくれたんです。そして、先生からアドバイスとして「ヨガをやっているとインプットだけでは学びきれないことがあって、アウトプットもしてみるとわかってくるよ」と言っていただいたのがきっかけで、じゃあ教えてみようかと思い、帰国してティーチャートレーニングに行きました。ただ、自分を雇ってくれるスタジオがなかったんですよね。初心者だし、男性だし。それならと、自分でスタジオを作ったんです。

ー以前はどんなお仕事をされていたんですか?
消防士でした。中学生から目指していた夢だったんです。当時、ヒーローに憧れていて、スーパーマンにはなれないから消防士を目指したんです。僕は、消防署は漫画やアニメの主人公の集まりのようなイメージを持っていたんです。でも、僕の理想と現実は違っていて、昔ながらの体制など疑問に思うことが出てきたんです。そんな時に、関わっていた市の市長さんに37歳の方が就任されたら、市の体制がどんどん変わっていった。その様子を見ていて、消防署も若い世代で変えていけたら面白いと思った時に、階級社会であることが裏目に出てしまったんです。星1つでは何を言っても変えられないんですよね。いきなり僕が下克上のように上の立場になれるわけではなく、それこそ消防長には定年前くらいまでなれないですし、そこに至るまでのポストもだいたい決まっている。既に、消防士も救急隊員もレスキューもしていたので、次に目指すものが見えなくなってしまって燃え尽き症候群のようになってしまったんですよね。そんな時にヨガに出合っていたので、エネルギーをそちらに注ぎたくなったんです。もちろん消防士という仕事は安定していたし、休みもあったし、やりがいもあるし、最高の環境だったと思うんですけど、ワクワクするのはヨガだったんですよね。安定とワクワクだったらちょっと危険でもワクワクする道に進んでしまうタイプなので、ヨガの道を選びました。
ー現在はどんなヨガを伝えられていますか?
「メディテーションフロー」というタイトルで伝えることが多いのですが、ソーシャルヨギーということで生活とヨガは結びついていることを伝えていきたいんです。僕は、「ヨガとは集中」と言い切っています。アーサナは体を使った集中のトレーニングで、瞑想は、心を使った集中のトレーニングなんです。日本人って、子供の時から「集中しなさい」と言われてきているけど、実際には集中って目に見えないですよね。その目に見えないものを取り扱えるようになるのがヨガの練習なんです。僕たちが生活の中で集中を使ったらQOLが上がると思うんです。仕事に対して集中力を使ったら、仕事の生産性が上がるかもしれないし、家族に対して集中力を使ったら愛が深まるかもしれない。遊びに使ったらもっと楽しいかもしれない。社会の縮図といえるヨガマットの上で集中の勉強をして、生活の中で自分の役割に対して使ってみると、きっと幸せになると思っているので、それをレッスンで伝えています。
何かを行っている時、時間を忘れて没頭するようなことって多いと思うんですけど、動的な動きの中では集中を作り出しやすいんです。反対に、じっと座って集中することって苦手な方が多いと思うんです。だからまずは体を動かすような動的なヨガで集中を学び、そこから少しずつ静かな状態に入る。集中の感覚が掴めると、座っていても集中できるようになる。
ーいきなり瞑想に入っても集中できない人が多い中、集中しやすいクラス構成にして集中する方法をわかりやすく伝えられているんですね。どんな方に西川先生のクラスを受けてほしいですか?
これからの時代をどう生きていこうか迷う人たちに受けてほしいですね。現代人は多様性の中で生きていて、たくさんの選択肢がありすぎて迷いますよね。これからの時代は、趣味と仕事の境界線が曖昧になっていって、自分の「好き」を持っていないと生きにくくなると思います。自分の「好き」という感覚で選んで行動していくことになるからです。だから、ヨガで集中を理解していくことで、自分の「好き」に寄り添えるようになっていけるんじゃないかと思うんです。
ー最後に、これから西川先生のクラスを受ける人に一言お願いします。
ヨガを教えている人も、習っている人も、クラスを受ける時には頭の中を真っ白にして受けてほしいと思います。「こうしなければいけない」などのこれまでの考えをいったん真っ白にして話を聞いてくれたり、レッスンを受けてくれたら、きっと得られるものがあるのではと思います。ヨガをしていると気付きが起こると思うのですが、気付きとは概念の破壊だと思っています。固定概念が破壊された時に新たなものが作り出されていく。これが起きることが人間が成長するために必要なことだと思うので、そのためにはまず真っ白にして、目の前で起きていることを受け入れる。それから自分の持っているものと照らし合わせた時に何かが起きるのではと思います。
ー本当ですね。まずはぜひ真っ白な気持ちで受けにきていただきたいですね。西川先生ありがとうございました。
Text: 磯 沙緒里
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